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作成日: 2009.11.02 18:59 カテゴリー: 小説 コメント数: 6件

  58.《暗黒堂》・第6幕 『編集長の一存』-後編

 ひとしきり睨みあっていた大人二人は、ゼロが観念したのか銃をひっこめたところで、とりあえず終戦を迎えた。

「まあ、お前やオフェリアの計略にはめられて、まんまとユピテルくんだりまで繰り出して来ちまったのは、もう今更しょうがねぇ。とりあえずカブト。テンを引き取っていけ」

「え………えええ………っ!? なんでですかぁ……っ!?」

 やっと気分が上がり始めたところで、ゼロに強烈なカウンターパンチを食らった気分だった。アルコも不思議そうに、テンとゼロを見かわしている。

「断る」

 続けて、あっさり捻り出された編集長の返答に、テンはわけもわからないまま泣きたくなった。二人に同時に、見放されたような気分だ。

 零れそうな涙をこらえてカブトにすがる視線を送ると、ゼロも苛々と机を指で叩く。

「………なんで」

「答えは簡単。ゼロがこの街の誰かに狙われてるってのは、もう動かしようもない事実じゃろう。そしてそれが事実だとすれば、当然この二日間、お前がテンとユピテル内をほっつき歩いていたのは相手も知ってるはずじゃ。テンが、お前を誘い出すための餌として利用される可能性、お前、否定できるかのう?」

「………パムカルに送り返しても、面が割れてるんじゃ、同じってわけか」

「そういうことじゃ。一度受けた依頼じゃ、しっかりやり遂げてもらわんと、こっちも金を出すわけにゃいかんからな。まあ、どうせ軍に請求するんじゃが。……それと、テン」

「あ……は、はい!」

 いきなり話を振られて、テンは椅子を蹴倒す勢いで身体をびくつかせた。カブトはウィスキーを喉の奥に流し込んでから、にんまりと笑みを浮かべる。

「またとない絶好の機会じゃ……しっかりスクープ、物にしろ!」

「スクープ……っ!?」

「最近、ユピテルの動きがきな臭いっていうのは、完全に黒じゃ。それを今、一番身近で体感する条件が整っとるのは、お前じゃ、テン。わしの言葉、ちゃんと胸に刻んでおるか?」

善悪を越えた先にある『真実』――物事が歪められる前の本当の姿。それを感じることができるのは、何ものにも染まらない、ただ真白な心だけ。

 それは、バイロン社に入社して、初めに叩きこまれる社の理念だ。

「……はい」

「まあ、危険は伴うじゃろうが……最悪、お前の死亡記事をトップニュースに添えてやると約束しよう」

「うわ、最低だ……っ! エグいよ、それはっ!」

「くそ……勝手に話を進めやがって……っ! こっちは負担が増えるだけじゃねぇか!」

 ずきりと、ゼロの言葉に胸が痛んだ。カブトの冗談より、よほど。

 自分は、いつも誰かの足を引っ張る。

 誰かに手を貸してもらわないと、何もできない。

いつも。ずっと。これからも、きっと。

 わかっていたはずだけど――そんな自分を変えたいと、いつも胸の底では思っていた。

 どうすれば変われるのか、変わるのか……答えなんて、出ないけれど。

 しょぼくれたテンのつむじに、視線が刺さる気配があった。恐る恐る顔を上げると、優しい目をしたカブトと、オレンジのガラス越しに目が合う。

「この子は……たぶん、お前らが思っている何倍も、何十倍も優秀で、役に立つ娘じゃぞ」

「ああ……?」

「じゃなかったら、なぜわしがバイロン社に入れるんじゃ」

「編集長……」

 カブトの珍しく温かい声に、不覚にもたまりにたまった涙の雫が、ポロリと頬を滑り落ちてしまった。それを憮然と眺めやったゼロが、きまり悪そうに頭を掻く。

 カブトは席を立ち、テーブル脇にかかっていた伝票を手に取った。それを見て嘆息したカブトだったが、不快そうな顔はせず、ぴたりとゼロに視線を合わせる。

「ゼロ……わしは、お前のことは信用しとるぞ。これでもな」

 それだけ告げると、踵を返して出口に向かうカブト。

 その背に、ゼロが声を掛けた。

「おい……お前、これからどうすんだよ」

「わしは残念ながら聖護隊に目をつけられてな。ひっそりと取材を続けることにするわい」

「………聖護隊に?」

「いやぁ、実は前にユピテルに来た時、復古派が暗躍してる気配があると、マスコミ連中に触れ回っていたのがバレてな。完全にお尋ね者状態じゃ」

 カブトはため息をついたあと、下がってきた眼鏡を上げて、意味ありげに振り向いた。

「あとな……復古派が琥珀祭中にテロって話、あれは……デマじゃ。憶えておけ」

コメント:6件

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コメント日:2009.11.02 19:06

***ぷちあとがき***

というわけで、ひっそり感づいていた人もそうでない人も、編集長の登場ですよ^^w

実は直前のテンの日記でバイロン社の理念をぽつりと出してるのと、

カブトとユリスの絡みでもカブトが理念を口にしてるので、私が連載を開けなければ大抵の人は気づいたはず(笑)

いやー、カブトの今までの不人気っぷりは上々だけど、私はカブト好きですよ。

彼はただ探究心が旺盛で手段を選ばないだけなんです。やんちゃなんです。やんちゃな大人です。

実は他のオリ小説からの流用キャラなんですよ、カブトって。

そこでは砂漠の国に反旗を翻す反乱軍のリーダーで表向きは冒険商人っていう

とんでもなくオイシイ役所だったんで、今でも思い入れは強いwww

グラサンとライフルはその名残ですかね。

ちなみに「バイロン」は「事実は小説よりも奇なり」と言った人で、社の理念のモデルにしました。

コメント日:2009.11.02 22:21

題名に編集長とあって、カブトが登場したときに、はっ!!! ってなったわwww

スーツ(だっけ?)にサングラスなんて、いかにも編集長っぽい格好だったのに、まったく結びつかなかったwww 不覚ーー!w

最初はめっちゃ目つけてたけど、いつのまにかなー。

つーかカブトって不人気なのww 嫌いではないけどww

 

テンの株がじわじわ上がってますね。

なにげ、暗黒堂のキャラでは一番好きっす

 

復古派のテロは嘘…?

うぅむ、だんだん追いつけてないぞww 復讐せねばっ!w

コメント日:2009.11.04 18:59

>虎狩り君^^

そうそう^^よくよく見るとカブトはきっちりした格好してんのよwww

虎狩り君に気づかれなかったのはとりあえず収穫だな(笑)

虎狩り君鼻がきくからな~www

 

テンの株、上がってきてますか^^それはよかった!!

テンは普通の子なんで、好かれるかどうかは賭けだったのですよ(笑)

その点、カブトは怪しさ大爆発で、みんなに警戒され…^w^;

 

カブトの発言は意味深だけどスルーしてもオッケーです^w^☆

読んでるうちにいつの間にか事件は動いていきますので^^w

コメント日:2009.11.06 17:13
編集長ずっと気になっていたけど
まさか今までに登場したキャラだとは全く思ってなかったから、かなりびっくりしたw(゚o゚)w
しかもそれがあのカブトだなんてっ
しばらく前のユリスとの会話の意味も、カブトが編集長ってことがわかって理解できた
取材してるからそういう現場にいつもいたんだなぁって

カブト不人気なの?うちは嫌いじゃないよっ
考えてることが分からないからとっつきにくいとこもあるかもだけど
そこがまたいい感じで好きです~

キャラの流用はうちもたまにやる(笑)
気に入るとそれをベースにした別なキャラだしたくなるんだよねぇ
コメント日:2009.11.06 20:40

>べあたん^^

意外とカブトの正体はばれてなかったようでひと安心だわ^w^☆

そうそう^^いま読み返してみると、ユリスとの会話の意味もなんとなぁく見えてくるかな?

カブトの武器は、まさに「情報」。この世で一番怖い凶器ですよw

 

そして、カブト不人気も何やら勘違いだったようで安心したわ~^w^☆

とっつきにくい奴だけど、是非とも愛でてやっておくれぇ♪

 

キャラの流用、やっちゃうよねw

せっかく温めてきたキャラだもの^^日の目を見させてあげたいというのが親心さ☆

コメント日:2009.11.14 19:00
おおおお!カブトが編集長だったとわ><b
何気にカブトがお気に入りなぱちさんなのでしたっ♪
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