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作成日: 2009.11.06 20:51 カテゴリー: 小説 コメント数: 6件

  60.《暗黒堂》・第6幕 『テンの能力』-後編

「……………?」

 ゼロとアルコは目配せし合って首を傾げる。

一分ほどもするとテンは顔を上げ、書いていたものをこちらに示してきた。

「……ん? え!? それって!」

 覗きこんできたアルコが、目を見開いてゼロの肩を叩く。あんまりしつこいので視線を飛ばすと、アルコは先程のパンフレットをこちらに押しつけるように見せてきた。

「見てくださいよ、オーナー! テンさんの描いた絵、この表紙とまったく一緒ですよ!」

 言われるままに見直すと、確かに。ユピテルのストリートの絵が描かれた表紙。ユピテル=ランギという文字のデザイン。差し込まれた文章――その内容、位置、細部に至るまで、完全に同一の絵を、テンは描いていた。もとからそのパンフレットの表紙絵を知っていたとしても、ここまで精密に描けるものだろうか。

「わたし、一度見聞きしたものは、絶対に忘れないんです」

「え、ええええええっ!? すっごい! ホントですか、それ!?」

「……直観像記憶とかいうやつか? すげぇな」

「よくわかんないけど……昔からそうなんです。ずっと」

 ゼロとアルコは素直に感心してテンをもてはやした。アルコなんかは特に、感動しきった瞳で彼女と、彼女の描いた絵を交互に見ている。

 そこで、ゼロは気がついた。テンは得意げに笑っていたが、指先が微かに震えていた。よく見れば、頬に冷や汗も浮いている。

(………一度見聞きしたものは、絶対に忘れない………か)

 それは、確かにすごい能力だ。カブトの目に留まったのも頷ける。記者としてならなおさら、その能力は生かしようによっては、ものすごい効果を発揮するだろう。

 しかし、それは本当に、幸せな力なのだろうか。

ゼロだったらその能力は、絶対に欲しくない。

人は忘れながら生きる生き物だ。つらく悲しいことも、時を経て薄らぐからこそ、また歩み出すことができる。立ち続けることができる。

ゼロだって、軍を抜け出すときに抱いていた痛みを忘れることはないが、それでも――キーノやアルコと過ごすうちに、また笑えるようになった。

 起こったことの何もかもを鮮明に胸に刻み込むことは、それを何年経っても薄らぐことなく引き出せてしまうことは――とても恐ろしいことだと、思う。

(人より優れた能力を持つことは、それ相応のリスクを背負うってことだからな……)

 エイオン=トルティーネは、才能に押し潰された哀れな少年だ。

 テンもまた、名家を捨て下野した、貴族の娘。

 ゼロは、眉尻を下げながら必死に笑おうとするテンの意志を汲んだ。

彼女の頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫でつける。

「な、なんですかぁ……っ、ゼロさん!」

「お前、いいもん持ってんじゃねぇか。有効に使ってやるから、ちゃんと役に立てよ?」

「うわ……またちょーあくどい顔して、この人は……」

 軽口を挟んだアルコを蹴倒して黙らせる。テンはしばらくぽかんとしていたが、アルコが起き出してくると涙を浮かべて笑い、本当に嬉しそうにこちらを向いた。

「はい! わたし、これから起こること、しっかりと記憶します! だから、何かを知りたいときは、いつでも頼ってくださいね!」

 

 

 

 同日夜――

 ベッドで心地よさそうに寝息をたてるアルコとテンをよそに、ゼロはどうにもおさまらない胸騒ぎを抱えたまま、ソファに寝そべり思考を繰り返していた。

 明け方近く――空中都市ユピテル=ランギを揺るがす『地震』に、飛び起きるまで。

 

【第6幕・了】

コメント:6件

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コメント日:2009.11.06 20:57

***ぷちあとがき***

テンの秘密…というほどでもないが、が明らかになりました!!

直観像記憶っていうのは、小さい頃は誰もが持ってる、目に見たものを正確に記憶する能力のことですね。

大抵の人は、歳をとれば自然消滅してしまうんですが、ごく稀にその力を有して大きくなってしまう人がいるんです。

これは嘘偽りない実際の情報です(笑)まあ、いわゆる天才ってやつですか。

テンの場合、プラス耳の記憶力もすごいっていう超人間にしてあります。直観像はたぶん眼だけ…だと思う…かな?(ちゃんと勉強しろぉ!!w

テンはそういう事情があって、常に頭はパンク状態なんで、自分の考えをノートに書くようにしてるんですよね。

取材の記録は取らなくても覚えてるんで、大丈夫なんです(笑)

彼女の今後の活躍、期待していてください!!

コメント日:2009.11.07 01:02
おー、テンにそんな能力が
なんかどっかにいたなー、そんなキャラw
なんか、家を出て行ったテンの気持ちがわかる気がする……

その能力、うらやましいような、そうでないようなw
でも、そんな力があってもしっかりと生きられるテンはすげーなー
過去にあった嫌なことも、全部忘れてリセット とかできないんですよね。
そういうふうに逃げられないから、真っ向から受けて留めるしかできない。
でもテンはそれができてる。強い子だねえ
やっぱテン好きだな~
期待しとこう

天空都市で地震とか、明らかに自然のもんじゃないっすなあ
そろそろシリアス指向っぽいっすな
コメント日:2009.11.07 04:53

>虎狩り君^^

まあ、どこにでもいるキャラっていえばそれまでだけどね(笑)

テンは結構苦労して育ってます。

いや、たぶんゼロやアルコなんかと比べたら、平凡な、っていうか優雅な貴族ライフだったんだけど。

それでも、私達の日常でもどうしても忘れたいことがあるように、

何もかもを憶えてなくちゃならないっていうのは、精神的に追い詰められると思うんだよね。

逃げ場もない。でも立ち向かう勇気もない。

テンは普通の女の子です。弱そうで強い女の子^^

 

そうそう^^天空都市で地震は「異常」ですね~^^

三日目以降、ストーリーは一気に加速しますよ!!

コメント日:2009.11.07 21:06
前回のカブトに続き今回はテンの力にびっくりだよっw(゚o゚)w
どうでもいいけど、そういう人って神経衰弱かなり有利そうだよね(笑)
そして、これからテンがこの力をどう活用していくのかワクワクでっす
それにしても、テンにそんな力があっただなんて・・・すごいなぁ

ってか、最後に出てきた地震って・・・空中都市にも地震があるのかっ!?
また続きが気になる終わり方だなぁ~
コメント日:2009.11.08 18:43

>べあたん^^

テンは神経衰弱負けなしだろうねぃ^w^☆

実はこんな力を秘めてたんですね!!

ちらちらそれっぽくにおわせた場所もあるんだけど、テンのはわかりづらかったろうなぁ^^;

町で見かけた兵士の人数覚えてたり、ゼロの言葉を一字一句間違わずに思い出してたり・・・

って、こんなんでわかるわけないわねw

 

空中都市に起きた地震!!ついに物語が大きく動き出しますよ!

しかし、いつになったら連載終わるんだろうなぁ~^^;

コメント日:2009.11.14 19:06
テンちゃん、すごい!!!^-^
うちはその逆で、すぐに忘れると言う…Orz

頑張れ!テンちゃん!行け行けテンちゃん!
うちはテンちゃんを応援してますよ^^
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